顔のないラブレター
気の合う同級生以外は決して話しかけてこない。教師もとっくにさじを投げて、気付けばあたしはいつも一人で学校から家へ帰る道を歩いていた。
スカートのプリーツが風でひるがえる。革靴のかかとを鳴らしながら、梅雨の雲を連れてくる空を眺めた。風はあたたかく、陽射しは柔らかく、かばんに放り込んだ折り畳み傘がひどく重たく感じられた。あたしはこの間よく磨いたばかりの革靴のつま先を見下ろして、かつりかつりと道を歩いた。
肩にかけたかばんを背負いなおすと、中に入った折り畳み傘とチョコレートの箱と筆箱がぶつかって音を立てた。その中に、小さな紙の擦れる音が混じる。あたしは途端に憂鬱な気持ちになった。立ち止まり、誰かが設置したんじゃないだろうかと疑いたくなるような絶妙な位置にあった小石を蹴飛ばす。
小石はてんてんと転がっていき、やがてぱたりと倒れて止まった。
ひゅっと風が吹いて、伸ばし始めの髪の毛を揺らしていった。あたしは誰も通らない道端に一人しゃがみこんで、じっと道の先を見つめた。
背負っていたかばんを下ろして、中をあさる。指先にあたったそれを破けないように引っ張り出して、風に飛ばされないよう慎重に封をあける。
「拝啓・・・・・・睦月、さま。お――手紙を、出す、の、は初めてです。驚かれることと思います。ぼく、は、いつも」
時代錯誤も甚だしい便箋は、腹立たしいほど真っ白で、ぎこちないきれいな字で書かれたそれは、確かにラブレターと呼ぶにふさわしいものだった。
あたしは息を吸い、便箋を一枚一枚めくる。
つづられた言葉と思いが滲むようで、いっそ泣きたくなる。
誰も彼もあたしを避けて歩いた。視線を向ければ顔を逸らして、教師は肩を縮こまらせて話した。
――お手紙を出すのは初めてです。驚かれることと思います。ぼくはいつも、睦月さんのことを思っていました。
――こうして、あなたにお手紙を差し上げるのにはとても勇気がいりました。
あたしは手紙を読み終えると、きれいに四角くたたんで、そうして小さく小さく破いた。破いていくそれをかたっぱしから風に流していった。細かい白い紙の破片が風に舞って、ばらばらになる。最後のかけらを破り終えて風に流す。
あたしは顔を覆った。
――お伝えしたいことがあります。
手をはなして空を仰いで立ち上がった。歩き出すと、スカートのプリーツがはためいた。細かく破いた白い紙が、風に舞っている。あたしは振り返らずに歩いた。誰も通らないこの道を、一人きりで歩いた。
――ぼくはあなたのことが、