おんなのこってなにでできてる?(サンプル)
おんなのこってなにでできてる?
■■■■や■■■■■、
■■■■■■■、
そんなものでできてるよ。
***
「遅い」
「てっきり明日返せばいいんだと思ったのに」
「明日は朝からナナを送っていかなきゃならんからな」
「ふうん」
まるでコミュニケーションを取る気がない、ただぶつけ合うだけの平坦な言葉たちがリビングに落ちる。途切れた会話を気にもせずに冷蔵庫から出したコーヒーを飲んでいたら、こちらを見ようともしない兄がテレビの方を向いたまま鼻を鳴らした。
「わからんわからんとは思っていたが、今のおまえのやってることはいよいよ理解できないな」
「あなたに理解されようと思ったことなんて、生まれてこの方一度もない」
むしろ、兄が私に対して「理解」という言葉を使ったという事実そのものに驚くくらいだった。そのくらい私たち兄妹は没交渉で、二十年以上に渡るそれを不便とも何とも思っていない。
飲み干してしまったコーヒーを注ぎなおしてソファに座る兄に車のキーを放り投げる。音がするように投げたとはいえ、後ろから飛んできたものを危なげなく受け止めるその様子に思わず舌打ち。
「車、助かったよ」
「舌打ちしながら言うな、白々しい」
「ふ、本心なのに」
含み笑いをしたら今度はこちらが舌打ちされた。
「───たまに話すとこれだ、忌々しい」
「おやすみなさい」
立ち上がって寝室に向かう間も私の方は見ないままで、結局彼が私と目を合わせることは最後までなかった。猫背がちの背中に社交辞令じみた挨拶を投げかけて、二杯目のコーヒーを流しに捨てる。
兄は私が今していることをおそらく正確に把握している。把握した上で理解を放棄して、そのくせ止めようとも軌道修正しようとも思っていない。自分に火の粉がふりかからなければ他はどうでもいいという、その認識だけは私たち二人に共通していた。だから私は兄が結婚した経緯も離婚した経緯もよく知らない。それは私に必要のない情報で、ほどほどにナナの面倒を見たりしていれば日常生活は送れるからだ。
そういえばメールが来てたんだった。ポケットの携帯を引っ張りだして今度こそ文面を見ようと操作する。いくつかの画面を経由して開いた皐月くんからのメールを見て、くっ、と喉が鳴った。
「王子様、かっこいいね」