てばやくやさしく
「ねーちゃん、お疲れ〜」
「……まったくだわ」
そう言うなりソファに体を投げ出した姉を覗き込んで、皐月は少しだけ顔をしかめる。
「うっわ、ボロボロじゃん。マッサージしよっか?」
「お願い」
「はいは〜いっと。俺様のテクに酔いな!」
外気で冷えたのか、ひやりと冷たい肌に指を滑らせると虚空を見つめていた如月の吐息がわずかに震えた。
それに気付かないふりをしてゆっくりと硬くなったふくらはぎや足の裏を揉みほぐしていく。じわじわと血の巡りが戻ってきて、本来のあたたかい体になってきたのを感じながら皐月はそっと笑った。
「がっちがち。どんだけ働いたの、ねーちゃん」
「そんなのわかるわけないでしょ……あんただって今日は、配り歩いてたんでしょう」
「マカロン? うーん、今年はなんかシューさんが面白そうなことするみたいだったからしてねーお」
「……そうなの?」
ぱちりと瞬いた顔はいつもより稚い。疲れ果てて冷静を装う気力もないのか皐月相手にそもそも装う気などないのか、きっとそのどちらもなのだろう。
緩慢なマッサージを止めた皐月がソファに手をついて身を乗り出す。ぐんと近付いた距離に如月がうっすらと眉をしかめた。
眉間によったしわに指先を触れさせて、皐月は吐息だけで囁く。
「だから、今年はねーちゃんにだけ」
甘い欲にまみれた声を流し込まれた如月は、しかし反発するように艶然と微笑んだ。
「────いいわ、食べ尽くしてあげる」
130214/on Valentine's Day:title by
COLOR BABY