皮膚と皮膚の呼吸

 お世辞にも広いとは言えないキッチンで二人、ぴたりと張り付くようにして立っている。初めてきちんと触れるからだが珍しくて、シュースクーは目の前の凹凸にぺたぺたと指を走らせた。ごくりと息をのむ音がする。
「ちょっ……あの、何なんです、この状況」
「神社サン、ドウシテ体コンナニ薄イノ」
「知りませんよそんなこ…っ、ど、どこ触ってんですクソ外人!」
「?」
 きょとんと首をかしげる。何なんですもなにも、全部神無月が悪いのだ。今まではずっとカウンター越しに穏便な会話を楽しむだけだったくせに、急にそれを乗り越えてキッチンが見たいだなんて言いだすから。
 ひゅっと息を詰まらせた拍子に動いた喉仏が軟骨よりやや硬い肉の気配を漂わせていた。シュースクーが思わずそこに噛みつくと、薄っぺらなからだが今度こそびくりと震えた。なだめるように噛み跡を舐めると、かがめた頭の上で神無月が湿った息を吐き出すのが聞こえる。小さく震えながら滑る吐息になぜか背中をなでられたような錯覚。
 シュースクーは顔を上げた。
「……神社サン」
「…………なんですか」
 呼びかけに答えようと開いた唇を指先でとらえて、近づいて──────


─────……っていうの、どう!? ピュアわんこ×卑屈おっさんていう新機軸!」
「ははは、葉月君、今すぐその妄想お焚き上げしてあげるからちょっとうち来なさい」
「? 神社サン、キッチン見タイノ?」
「断固としてお断りです!!」
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