武器は純情

「先輩先輩、USJって何があるんスか」
「あれ、むっちゃん行ったことなかった?」
「ないっスよ、先輩、睦月を置いていつの間にそんな面白げなとこ行ってんスか」
「いやいや、実はあたいも行ったことないのよう?」
 むう、と子供っぽく膨れたほっぺたを両手で潰すと、とがったくちびるから空気の抜ける音がした。実年齢よりもだいぶ幼く見える可愛さに笑う。年下の恋人は、最近ようやくあたしの前で大人ぶることをやめた。
「ぶさいくなんで手ぇ離してください。先輩だって行ったことないんじゃないスか!」
「でっでもUSJ妄想するのでガイドブックちょー読んだし! ガイドできちゃうよ? 行ったことないけど」
「ペーパーガイドとかマジ勘弁ッス!」
 反論し続ける睦月も、どうせ現地に行ったらはしゃぎ倒すに決まってる。だってUSJは「子どもから大人まで楽しめる、ワールドクラスのエンターテインメントを集めたテーマパーク」だ! ガイドブックからですらにじみ出るご機嫌な雰囲気に、すでに行ったような気になってしまうのも仕方ないと思う。
 睦月がふいに口を閉じてしまったので、少しだけかがみこんで瞳を覗き込んだ。マニアにはたまらないと一部で評判の気の強そうなまあるい瞳がさみしげに不安で曇っている。
「……どしたの?」
「あの、……USJ、行くなら、先輩と二人がいいなって、えっと」
「うん、そのつもりだけど」
 暦の女子会で行くのも楽しそうだけど、それはまたの機会でもいいだろう。睦月のUSJ初体験はあたしがエスコートしてあげたかったし、「恋人同士」になってからちゃんとお出かけもできていない。如月姉さんたちには悪いけど、今回は遠慮してもらおう。
 そう言ったら、睦月はすべすべのほっぺたを真っ赤に染めて目をぱちくりさせた。それからすぐに眉を寄せて不満げな顔をする。
 あ、あれ、あたしなんかまずいこと言った?
「葉月先輩のそういう、あっさり殺し文句言っちゃうとこ、睦月大好きだけどまじ許せないっス!」
「え、ええええ」
 理不尽!
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